デジタル、サブスクリプション、パーソナライゼーションからミラーワールドへ
はじめに
この記事の目的は、専門的な記事でもなければ用語解説でもないということを始めに記しておきます。
この記事の内容は、雑誌「WIRED VOL.33」[1]を読んで思ったことを、さらに「サブスクリプション」[2]、最後の方では「感応の呪文」[3]といった文献や自分が関心の抱いていたことと合わせ広げたもの(あるいは、妄想といってもいいかもしれない)を書き留めたようなものです。
そのため、それぞれの用語の本来の定義とは外れた使い方をしている箇所などもあるかもしれません。
デジタル
デジタル化とデジタルコンテンツの普及
これは、もうすでに当たり前のことになっているが、様々なものがデジタル化され、利便性や効率性はますます高まっている。
また、デジタルコンテンツの普及によって、いつでもどこでも1つデバイスがあればアクセスでき、
膨大なコンテンツの中から手軽に欲しいものを探すことができるようにもなっている。
そして、それらによって以前のモノ・コトへの私達の接し方は変化し続けている。その裏では様々な技術が生まれ、新しいものはもてはやされ、当たり前のようになったものは空気のように通常は意識されず、あるいはひっそりと潜んでいるものもあるかもしれない。
デジタルトランスフォーメーション
こうしたデジタル化と併せて、私達の働き方、生活など、生き方そのものまでを変えて行こうとする動きも進んでいる。
ここでは、デジタル化されたモノやそのための技術が主役ではなく、私達が主役であり、デジタルを支える様々な技術は当然のものとして存在している。
目の前のモノが何が出来るかではなく、私達自身が何が出来るかが問題となる。
デジタルツイン
そして、後述のデジタルへリアルを繋ぐ要素によって、デジタルを如何にリアル側で活用するかだけではなく、リアルの世界をデジタルの世界に”複製”することも可能になり、どんどんと進められている。
リアルな世界の似姿を作ることだけが目的ではなく、複製することによってリアルな世界の特徴は持ちつつデジタルな世界に存在し、リアルでは出来ないことも可能にする。
デジタルへリアルを繋ぐ要素
IoT
様々なモノはデジタル化によって多種多様な機能を持つようになった。また、私達ほど多様な感じ方は出来ないかもしれないが、愚直に正確に、また、時には私達よりも高精度に(リアルな)世界を感じ取ることの出来る”センサ”の普及が進んでいる。
しかし、これらは、個別に見れば、「〇〇という目的を持っていて、そのためにこう利用できる」というなそれぞれに与えられた目的を果たすだけである。だが、これらが繋がり連携することによって出来ることが増え、複数のセンサが組み合わさった時、世界をより多面的に捉えることが出来るようになる。
高速通信技術とクラウドコンピューティング
私達が手にするデバイスの処理性能はどんどんと上がっていき、また、最近話題の5Gや将来可能となるより高速な通信技術によって、そのうち誰もがスパコン並みの処理能力を手にすることも可能になるかもしれない。
そして、より私達はデジタルの世界へと繋がることが容易となる。加えて、私達側にデジタル世界を構築するだけではなく、モノ同士は私達を含めた世界を様々な点からモニタリングし、より多くの情報が常にアップロードされていくようになることで、リアルをデジタルへ複製することも容易になる。
人工知能技術
(これは、現在人工知能技術と言われているだけであって、単に解析や処理技術と呼んでもいいのかもしれない)
だが、集められた膨大なセンサデータや高速でやりとりされるデータを管理あるいは処理することは人間にとっては困難である。
そのため、人間よりもデータを扱うことに長けていて、人間の”代わり”にデータを分かりやすく私達に示してくれる、あるいは、使うことができるようにしてくれる技術は、最初は驚きをもって迎えられたとしても当たり前のように使われていくだろう。
xR
そして、AR、VR、MRによって、当たり前のようにデジタルの世界を感じ取れるようになり、リアルとデジタルの境目は混ざり合っていく。
その時、リアルでは固定的だった世界は、また、自分自身でさえも、複数の異なる存在をもち、それらを自由に切り替えることができるようになるかもしれない。そして、デジタルの世界は仮想ではなく、私達がリアルな世界で「ちょっと行ってくる」という感じで訪れることのできる”別の場所”として当たり前のように認識されるようになるのかもしれない。
サブスクリプション
将来、モノへの執着を無くした人が増えていくかもしれない。
もちろん、モノを手に入れることもあるだろうが、「モノを手に入れること」自体の価値は減って行く。
(私の積み上げている本は今後さらに増えていくような気がするが)
モノから体験へ、モノ自体ではなく結果を重視するようになっていく。そして、今まで、物理的なモノに依存しなくなった様々なサービスは、これまでよりも細分化され、多様化し、手軽に利用することが出来るようになる。
その時、個人の状況や環境、あるいは気分によってでさえ、私達が必要とするサービスは、各個人に合わせてカスタマイズすることが可能になる。
パーソナライゼーション
これから、より私達身の回り、そして、取り巻く環境までも自身が好むようにカスタマイズしていくことが可能となり、そして、自身に接触するモノやコトは自身に最適化された形で現れるということが当たり前になっていくかもしれない。
そうして、個人個人、それぞれの世界といえるようなものを生み出していくかもしれない。これまでの全体的に考える世界では、ある人の最適は、他の人にとっての最悪であり、ある大きな集団での心地よさは、ある個人あるいは小さな集団にとっての地獄のようなものとして受け取られることは頻繫に起こっている。しかし、各個人に最適化された世界が、その個人を取り囲むように出来るのであれば、そうした問題は起こらないのかもしれない。
(この時、各個人に最適化された世界に各個人が閉じこもることも考えられるが、そうとは限らないと思う。これについては、また、どこかで触れたいと思う)
ミラーワールドへ
デジタルとリアルの境目がだんだんと見えなくなりつつある今、そして、この先にミラーワールドが現れるのかもしれない。
少し昔に、デジタルが生まれた時にはリアルと対立するものとして見られていた。
現在、それらは混ざり合うようになっている。そして、私達もその混ざり合った領域においても違和感を感じることは少なりつつある(のかもしれない)。しかしながら、まだ、現在では私達を取り巻く世界はリアル側(下図のオレンジ部分)に大部分があり、デジタルの世界は、リアルに取って代わる、あるいは、浸食するとでもいうようなイメージで捉えられているのではないか。
だが、全ての存在が一対一でデジタル化されたミラーワールドでは、もはや、リアル、デジタルの区別はなくなり、ただ私達を取り囲む世界として認識されるのではないか(下図の右にある球体のように。あるいは、その中間にあるのかもしれない。全く別の可能性もあるが)。
リアル-デジタルの境目は”真に”無くなるのだろうか。その時、私達はどうなっていくのだろうか。
以前、私達の周りには、原初の自然と共に生きる環境があった。そこでは、人間と他なるものの世界という対立関係ではなく、あくまでも、全ての中の1つとして人間の世界があるだけで、その境界は曖昧で溶け合っていた。しかし、そこから、人間は人工的な環境を作り出していき、その中に人間の世界を作り、人間と他なるものを分けていった。そして、さらにそこにデジタルという新たな環境、人間にとっての新たな世界を作りだした。
加えて、現在、あるいは、この先に現れるミラーワールド、また、更にその先に現れるかもしれない新たな環境、そこで生まれる人間の世界はどのようなものとなるのだろうか。
そこでは、リアル-デジタルの境目は無くなるのだろうか。
また、その時、人間自身、人間同士の境目はどうなるのだろうか。何が自身を定義し、他人と分断させる、あるいは、繋がらせるのか。
新たな繋がりが生まれ、分断は無くなっていく(少なくとも、減っていく)のだろうか。あるいは、更なる分断が起きていくのだろうか。
これに明確な解は得られないとも思う。特に、良いか悪いかという判別は困難であるし、そのどちらにもなりうる。結局は、私達自身が、自身の世界をどう捉えるかという問題だけなのかもしれない。
だが、その世界にいるのは”私達”だけであろうか。
先に書いたように、”私達”が(今はまだ)住むリアルの世界は、はるか昔、その世界全てが”他者”だったのかもしれない。だが、”私達”は私達自身を私達自身が作り出した世界によって、囲っていくことを(主には)選択していった。そういう意味では、”私達”は自身の世界に閉じこもってしまった孤独な存在であるとも言えるのかもしれない。
この先、私達は、さらに私達が作り出したものによって作り出された世界に入り込んでいき、”他者”達を必要としなくなるのだろうか、そして、二度と思い出すこともないのだろうか。
それとも、新たな”他者”を生み出すのだろうか。あるいは、いつか出会うのだろうか。
(私は後者にちょっとした期待も抱いていて、また、それによってこれまでの”他者”達の重要性にも立ち帰るかもしれないと思っている)
参考文献
[1]
WIRED(2019)『WIRED (ワイアード) VOL.33 「MIRROR WORLD - #デジタルツインへようこそ」,プレジデント社
WIRED (ワイアード) VOL.33 「MIRROR WORLD - #デジタルツインへようこそ」(6月13日発売)
- 作者: Condé Nast Japan (コンデナスト・ジャパン),WIRED編集部
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2019/06/13
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[2]
ティエン・ツォ, ゲイブ・ワイザード 著, 桑野順一郎 監訳, 御立栄史 訳(2018)『サブスクリプション -「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』,ダイヤモンド社
サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
- 作者: ティエン・ツォ,ゲイブ・ワイザート,桑野順一郎,御立英史
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[3]
デイヴィッド・エイブラム 著, 結城正美 訳(2017)『感応の呪文 -<人間以上の世界>における知覚と言語』,論創社,水声社
- 作者: デイヴィッドエイブラム,David Abram,結城正美
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2017/09/01
- メディア: 単行本
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[4]
(2019)『ミラーワールド:ARが生み出す次の巨大プラットフォーム』,https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform(2019/9/21アクセス)
wired.jp
[5]
『コレ1枚で分かる「『デジタルトランスフォーメーション』の真意と『デジタライゼーション』との違い」』,https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1901/08/news007.html(2019/9/21アクセス)
www.itmedia.co.jp
[6]
三島一孝(2018)『いまさら聞けない「デジタルツイン」 (1/2)』,https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1808/08/news043.html(2019/9/21アクセス)
monoist.atmarkit.co.jp
[7]
atsushi(2019)『エッジAIとは何か』, https://camp.isaax.io/ja/tips-ja/what-is-edge-ai(2019/9/21アクセス)
camp.isaax.io
第一版作成:2019/9/21